2016年3月19日土曜日

2013年に全米を駆け巡った弩級のニュース?医療保険は加入者の健康状態も死亡率も改善させていなかった?パート9

Oregon Health Experiment Shows That Having Health Insurance Is Different Than Being Healthy

David Whelan

オレゴン州からの新しい研究は古くからある質問に答えようと取り組み、同じ答えに辿り着いた。医療保険に加入することは健康であることと同じなのか?

答えは違う、だ。人々は保険に加入していても毎日死んでいる。他の人は保険にまったく加入していなくても長生きしている。私が住んでいる場所から南に20マイル離れたアーミッシュのコミュニティにはその2番目のグループの人たちが多く含まれている。だがこの重要な違いが1000マイル離れたワシントンでは失われてしまうようだ。

保険と健康は、皆保険の支持者によってよく関連付けられ混同されてきた。保険は医療へのアクセスを保証するので保険自体が健康の重要な決定要因だと彼らは主張してきた。言うまでもなく、健康と医療もまた混同されてきた。だがそれはまた別の話だ。

誰が正しいのか、どうやって判断すればよいのか?

オレゴン州のことを調べた経済学者に聞くのがいい。彼らは製薬会社が治験を行うのと似た方法で、保険は本当に重要なのかという疑問に答えた。これはこの種のもので初めてのものではない。1972から1982に行われた有名なRANDの研究は、自己負担額が増えるように設定すると人は医療の利用を減少させるが、肉体的な健康状態には少しも影響を与えないことを示した。この結果は、HMO運動を誕生させるきっかけとなった。

MITの経済学者Amy Finkelsteinに率いられたオレゴンの研究は、2008のオレゴン州の置かれていた状況が重要な鍵となっている。オレゴン州は当時メディケイドを拡大させようとしていたが予算が足りなかった。そこで人数を制限するため希望者に対して抽選を行った。彼らは抽選に選ばれて保険に加入した人とその人たちと同じ特徴を持ちながら抽選に選ばれなかった人とを比較した。この研究は彼らが2つのグループの健康状態と金銭的負担とを調べ続けられ間、続けられた。

去年、最初の結果が公開され2つのグループは健康にわずかな違いしか見られないというのが主な結果だったが、結論を出すには早いということになった。

今日、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に2年目の結果を含んだ論文が掲載された。その結果は、またもや健康と保健は同じものではないだった。

引用すると、

(繰り返しになるので省略)

どうやらメディケイドは人が病院に行く回数を増やしているようだ。金銭的負担を低下させてもいるようだ。だが一方は抽選に選ばれて一方は抽選に選ばれなかったにも関わらず、2つのグループは同じ健康状態だった。

(話がそれるが、第二のグループとはどういうものか私は関心がある。彼らが入院した時にその時点に彼らはメディケイドに加入するだろうことを思えば。もしくは所得の低い人がいつもやっているように、彼らが病気になった時に治療を受ける方法が幾つかある。ERは患者を容体が安定するまで必ず受け入れなければならない。低費用の治療が存在する。コミュニティ・ヘルス・センターでもまたは単に自己負担で払う場合でもだ。保険に加入していない人たちがやっていることがどれであるにせよ、それは第一のグループに対して彼らを害することにはならない)。

この研究を巡って、政治的議論がこれから巻き起こるだろう。その話題は他の人に任せようと思う。

だが、オレゴンの結果は医療保険に関する研究をよく知っている者にとっては驚きでも何でもないということを指摘しておきたい(ワシントンの政策当局者はもちろんこの中には含まれない)。

経済学者は、オレゴンの筆者たちによって回答されたのと同じ質問を長い間してきた。医療保険は人々を健康にするのか?1962から1972の間にこの話題を巡ってケネス・アローとゲイリー・ベッカーは討論してきた。

アローは、医療保険はマイナスの影響を与える(与えうる)と論じた。シートベルトやエアバッグが危険な運転を誘発するのと同じように、保険に加入した人は健康に気を使わなくなるからだと論じた。ベッカーは、医療保険を買おうとする人は「自己防衛」に価値を見出している人である傾向が相対的に高いはずだと反論した。避雷針を備え付けているビルの持ち主は煙探知機も備え付けている傾向があるのと同じように。ベッカーが論じているように、防空壕が戦争を起こすわけではない。

その議論はずっと続いたが、理論面での議論は実証面での研究に席を譲ることになった。

自己負担率の異なる5つのタイプの保険にランダムに加入させた2750の家族を追跡調査したRANDの研究は、保険が人々を健康にするのか?という疑問に答えることを特に目的にしているのではなかった。だが、それは自己負担額がゼロかあまりないタイプの保険に加入した人とほぼ全額自己負担か自己負担が大きいタイプの保険に加入した人との間に健康に関する生活習慣や健康状態に違いが見られないことを発見した。

「リスクの高い行動は影響されていなかった。例えば、喫煙率や肥満率などは変化していなかった」とその研究を指揮したジョセフ・ニューハウスは語った。医療へのアクセスは健康への投資を増加させなかった。

この結果は、オレゴンの結果が公開される前でさえも何度も何度も再現された。

2006に、Dhaval Dave and Robert Kaestnerは保険に加入していないアメリカ人で65歳になってメディケアの受給資格を得たグループを調べた。この枠組により保険の有無以外の要因を制御することが可能になった。興味深いことに、65歳になって保険に加入した女性は健康に関する生活習慣や健康状態を変化させなかった。だが男性は、メディケアに加入するとリスクの高い行動を取るようになった。肉体を使った運動は40%減少した。喫煙は16%増加した。毎日のように飲む飲酒は32%増加した。

言い換えると、保険に加入することによって彼らはそれまでほどには健康に気を使わなくなった。この研究に関して気になっていることがあるのは、それらの変化が単に退職による行動の変化の表われではないのかということだ。多くの人にとって、退職も65歳という年齢と一致している。この研究を行った経済学者は就職しているかどうかをコントロールしていると主張している。だがそれでも少し疑問は残る。

2008に、他の経済学者Anderson StancioleがPanel Study of Income Dynamics(調査される人が毎年ランダムに選ばれて変わるような普通の調査ではなく、最初に選ばれた人がその後の調査にも続けて参加するタイプの統計。これにより例えばその人の5年間の所得の推移であるとか今まで明らかでなかった情報を得ることが出来、普通の統計を用いるのでは出来なかった生涯賃金の格差などの分析が出来るようになる)を用いて水平的なデータを分析した。その統計は8000の家族を追跡調査した。年齢、雇用状態、所得、人種、性別やその他の要因を制御した後で、彼は保険が飲酒の増加、喫煙の増加、運動の低下と結びついていることを発見した。ここでも、保険は健康的な活動をもたらしてはいなかった。むしろ逆かもしれない。

Jay Bhattacharyaによる「保険は人々を太らせるか?」という挑発的なタイトルが付けられた2009の論文は保険と肥満との間の関連を見つけている。彼が用いたのは15歳以上の1万2000人の10代を追跡調査したNational Longitudinal Survey of Youthだ。彼は、保険に加入していない場合に比べて10代の児童がメディケイドに加入している場合にはBMI指数が2.1ポイント、民間の保険に加入している場合には1.3ポイント高いことを発見した。

オレゴンの研究は、同じような結果を示した最も新しいものだ。保険に加入していることと健康であることとはまったく異なるものだ。これらを混同するのはもうやめよう。

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