David Whelan
オレゴン州からの新しい研究は古くからある質問に答えようと取り組み、同じ答えに辿り着いた。医療保険に加入することは健康であることと同じなのか?
答えは違う、だ。人々は保険に加入していても毎日死んでいる。他の人は保険にまったく加入していなくても長生きしている。私が住んでいる場所から南に20マイル離れたアーミッシュのコミュニティにはその2番目のグループの人たちが多く含まれている。だがこの重要な違いが1000マイル離れたワシントンでは失われてしまうようだ。
誰が正しいのか、どうやって判断すればよいのか?
オレゴン州のことを調べた経済学者に聞くのがいい。彼らは製薬会社が治験を行うのと似た方法で、保険は本当に重要なのかという疑問に答えた。これはこの種のもので初めてのものではない。1972から1982に行われた有名なRANDの研究は、自己負担額が増えるように設定すると人は医療の利用を減少させるが、肉体的な健康状態には少しも影響を与えないことを示した。この結果は、HMO運動を誕生させるきっかけとなった。
MITの経済学者Amy Finkelsteinに率いられたオレゴンの研究は、2008のオレゴン州の置かれていた状況が重要な鍵となっている。オレゴン州は当時メディケイドを拡大させようとしていたが予算が足りなかった。そこで人数を制限するため希望者に対して抽選を行った。彼らは抽選に選ばれて保険に加入した人とその人たちと同じ特徴を持ちながら抽選に選ばれなかった人とを比較した。この研究は彼らが2つのグループの健康状態と金銭的負担とを調べ続けられ間、続けられた。
去年、最初の結果が公開され2つのグループは健康にわずかな違いしか見られないというのが主な結果だったが、結論を出すには早いということになった。
(繰り返しになるので省略)
どうやらメディケイドは人が病院に行く回数を増やしているようだ。金銭的負担を低下させてもいるようだ。だが一方は抽選に選ばれて一方は抽選に選ばれなかったにも関わらず、2つのグループは同じ健康状態だった。
この研究を巡って、政治的議論がこれから巻き起こるだろう。その話題は他の人に任せようと思う。
アローは、医療保険はマイナスの影響を与える(与えうる)と論じた。シートベルトやエアバッグが危険な運転を誘発するのと同じように、保険に加入した人は健康に気を使わなくなるからだと論じた。ベッカーは、医療保険を買おうとする人は「自己防衛」に価値を見出している人である傾向が相対的に高いはずだと反論した。避雷針を備え付けているビルの持ち主は煙探知機も備え付けている傾向があるのと同じように。ベッカーが論じているように、防空壕が戦争を起こすわけではない。
2006に、Dhaval Dave and Robert Kaestnerは保険に加入していないアメリカ人で65歳になってメディケアの受給資格を得たグループを調べた。この枠組により保険の有無以外の要因を制御することが可能になった。興味深いことに、65歳になって保険に加入した女性は健康に関する生活習慣や健康状態を変化させなかった。だが男性は、メディケアに加入するとリスクの高い行動を取るようになった。肉体を使った運動は40%減少した。喫煙は16%増加した。毎日のように飲む飲酒は32%増加した。
2008に、他の経済学者Anderson StancioleがPanel Study of Income Dynamics(調査される人が毎年ランダムに選ばれて変わるような普通の調査ではなく、最初に選ばれた人がその後の調査にも続けて参加するタイプの統計。これにより例えばその人の5年間の所得の推移であるとか今まで明らかでなかった情報を得ることが出来、普通の統計を用いるのでは出来なかった生涯賃金の格差などの分析が出来るようになる)を用いて水平的なデータを分析した。その統計は8000の家族を追跡調査した。年齢、雇用状態、所得、人種、性別やその他の要因を制御した後で、彼は保険が飲酒の増加、喫煙の増加、運動の低下と結びついていることを発見した。ここでも、保険は健康的な活動をもたらしてはいなかった。むしろ逆かもしれない。
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